イカルの森

ピエゾグラフについて

ピエゾグラフとは、エプソンデジタルプリント技術による作品の質感を再現できる、人の視覚・知覚に極めて近い画像表現を特徴とする新たな技術です。

質感を再現可能にする
画像の粒子化

デジタル技術で画像を再現するには、まず画像を色相・彩度・明度の要素をもった粒子に分解して再構成します。再構成された画像は出力される用紙(メディア)に合わせ最適化され、デジタルプリンタによって再び画像として生成されます。デジタルプリントのなかでもインクジェットプリンタは、その粒子に明確な存在感を持たせる事ができるプリント技術なのです。
エプソン・マイクロピエゾ技術で実現したインクジェットプリンタの粒子が作り出す質感こそが、既存画像創作技法のリトグラフ、シルクスクリーンやオフセット印刷とはまったく違う結果を生み出す事になります。この質感をともなった画像表現技法を「ピエゾグラフ」と定義します。
この粒子化したインクの集合体で構成される画像は、6色または7色のインク粒子によってその画像が構成されます。従来の4色分解によって版を構成するプリント技術では各版の網目やベタ面で構成された版によって転写される色面の重なりで画像が再現されます。4色の中間をつなぐ色が存在しない為、本来見えるはずの多様な色彩が再現できなく、色の質感を損なうことになります。多色インクとマルチドットによって画像を構成する「ピエゾグラフ」は複雑な色要素を再現できるプリント技法なのです。これはアナログ記録の音楽が不可聴部分を含むことから「音にふくらみ」を持つ事に似ていると言えます。
つまり「ピエゾグラフ」はデジタル技術の最先端にあるにもかかわらず、人の感覚にあったアナログな表現技術なのです。それは、従来の版画技術のように原画の制作方法を制限しない複製技術とも言えます。
よって、無機質なCGの再現よりもアナログな筆のタッチ、画材の素材感にあふれた作品表現にピエゾグラフは最適な技法と言えます。

銀塩写真との相違

銀塩写真やフィルムに使われる色材の粒子は、配列はランダムです。用紙に塗布され固定された色材は個別の配列をもったもので、そこに再現される画像は色材の偶然の配列に影響を受ける事になります。ミクロな観点ですが、これによって同じものは作りにくい事になります。
デジタルプリントであるピエゾグラフでは、画像構成する粒子の配列が完全に制御されていますから再現性に偶然性はない事になります。それだけ正確な再現ができるという事になるのです。
次に述べる「用紙の自由度」に準じますが、感材のもつ質感の制限は、インクジェットプリントのピエゾグラフには無く、用紙の自由度が格段に広い点も銀塩写真との大きな相違点です。

紙の自由度

インクジェットプリントのピエゾグラフは、非接触型プリントなので用紙の選択幅が大変広いのが特徴です。また、従来の版画技法は版木からの直接転写です。その為、用紙(メディア)に版を圧着することが必要でした。よって用紙には必ず圧力がかかり、またインクにも圧力がかかります。これによりプリント面が硬直し、硬い仕上がり感が残ることになります。ピエゾグラフは圧力が用紙にもインクにもかかりませんから、用紙(メディア)の風合い(タッチ)を生かしたプリントが作成可能となります。
従来オフセット印刷には不適とされていた「和紙」への、最適なプリント方法がインクジェットプリント=ピエゾグラフと言えます。それは、日本の伝統的なメディアである和紙が、最新のプリント技術に適しているという興味深い現象を生み出しました。
いずれにせよ、用紙の自由度の広さは作品制作の可能性を積極的に広げる要素です。

プリントアート制作の
技法として

ピエゾグラフはデジタルプリントの技法のひとつですが、単に複製(コピー)を作るための技術ではありません。様々な画材と手法で描かれた原画をデジタル処理し、既存の画材では再現できない画像処理(色相や彩度の変更)を作品に加えることが可能となります。
原画から拡大または縮小プリントした2次原画(原画といえるクォリティがある)をもとに改めて加筆する事もできます。その結果が新たなオリジナルを生み出すことになります。

制作における人の技

以上のようにピエゾグラフはデジタルグラフィック環境が生み出したまったく新しい表現技法です。しかし、デジタル機器の性能や特性が向上する事によって果たして誰でも、その能力100%生かせる事ができるのでしょうか。
既存の版画が、同様な機材を用いて特定の工房が制作する事によって、極めてすぐれた作品になる事がすでに実証されています。たとえばアメリカの テーラー工房、版画工房として高い技術が認められています。
ピエゾグラフも同様に、道具としてデジタル機器を使いながら、作家の意志、使用する用紙の性格、再現する画材や画法によってさまざまな調整を行う人の技術が必要となります。
機器の性能の向上は、けっして創作作業を自動化するものではなく、道具として機器を使い込むことにより、機器の性能以上の表現が可能となることも有り得るのです。
よってピエゾグラフはデジタルの先端技術である同時に、人の感性に基づく技能を要求する技法であり、作家とパートナーとなれるオペレーター(ピエゾグラファーPiezoGrapher)が重要な役割を果たすことになります。

アートの癒やし効果

私たちは本来、自由で、健やかで、無限の可能性を持っています。しかし、子どもから成人する過程において様々な制約を刷り込まれてしまいます。ストレスを抱え、所詮人間なんてこんなものと、知らないうちに制限をかけてしまっています。
お部屋の中に一枚、アートを置いてみてください。毎日じっくり見る必要はありません。何も考えずに時々ふと目を止めていただくだけで結構です。暮らしの中に一つヒーリングアートがあるだけで、暮らしをしなやかなものに少しずつ変えてくれます。